積立投資にまわせる金額が大きければ、まだ楽天VTよりも本家VTの方が有利な感触

今私が本家VTから楽天VTに変更する必要はない

以前『海外ETF(VT)積立投資の実績公開:2020年1月末時点の積立状況』という記事の最後の余談で、投資商品を海外ETFから再び投資信託に戻すかどうか悩んでいると告白しました。

今回の記事は、少なくとも現時点では、海外ETFであるVT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)から、投資信託の『楽天・全世界株式インデックス・ファンド』や『SBI・全世界株式インデックス・ファンド』に戻る必要がないと、私が判断した備忘のメモです。

理由は単純です。あくまで私の積立状況だったらという前提付きですが、VTの方が利益も大きく、投資効率も高かったからです。VTと上の2つの投資信託との比較しかできておりませんが、他の全世界株式インデックスファンドとも比較をしてみたいと思っております。

それから、今回の記事では、海外ETFのVTを本家VTと、投資信託の『楽天・全世界株式インデックス・ファンド』を楽天VTと呼ぶことにさせて下さい。

投資信託に再び惹かれてしまった理由

はじめに本家VTと楽天VTとを比較することに至った背景を説明します。

現在、私は本家VTの不定期な積立投資を続けています。ちなみに、確定拠出型年金と勤務先の持株会を除けば、他の金融資産は現預金の生活防衛資金しかありません。

投資商品として本家VTを選んだ理由は、『リスク資産は株式インデックスファンドだけで十分』、『対象は全世界で、含まれる銘柄数は多い方が好ましい』、『経費は安いほど好ましい』、『投資する商品は可能な限り少なく』という私の投資方針に合致していたためです。更に、私がVT積立投資を始めた頃は、海外ETFの経費に対抗できる有望な投資信託がほとんどありませんでした。このような経緯で個別株と投資信託を全て売却し、投資対象を海外ETFである本家VTに一本化しました。

ところが、時間とともに投資環境も変化します。最近になり、どんどん低コストな投資信託が充実してきました。信託報酬の低さがも海外ETFに迫るほどです。このため全世界株式インデックスファンドの投資信託が再び気になり始めました。

もともと私は本家VTに対して一点だけ不満がありました。それは、年に4回分配金が支払われることです。分配金には課税されます。すると無配当の場合に比べて、リターンが低下してしまいます。一方で、無配当タイプの投資信託であれば、仮に経費が海外ETFより多少高くても、分配金への課税(日本国内分)がない分だけリターンが海外ETFを上回る可能性があります。

投資信託の方がリターンが大きいなら、敢えて海外ETFに投資する理由ないですからね。

以上のような悩みを抱え、最近まで悶々としておりました。

本家VTと楽天VTとの比較

もしも本家VTから投資信託に戻るとしたら、第一候補は楽天VTか『SBI・全世界株式インデックス・ファンド』ではないでしょうか? どちらもベンチマークインデックスが本家VTと同じ『FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス』だからです。もちろん『MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス』系の投資信託も有望ですが、本家VTからの変更となると私的には第二候補群です。

本家VTと楽天VTのリターンの優劣を判断することは困難です。買付額と買付タイミングにより結果が変わる可能性があるからです。

一般的な比較は難しいため、まずは過去の私の本家VTの積立投資のキャッシュフローを整理して、もしも本家VTではなく楽天VTに投資していたらどのような結果になっていたかを調べてみました。

本家VTと楽天VTの主な違い

本題に入る前に本家VTと楽天VTの主な違いを下の表に整理してみました。この他にもファンドとしての安定性として純資産総額や基準価額との乖離なども気にする人が多いですが、ここではリターンに直接影響がありそうな項目を主に挙げました。

両者の違いを一言で説明すると、『買付単価が少ないこと』、『各種手数料が安いこと』、『分配金が無配であること』、『手間がかからないこと』が投資信託の有利な点。『保有中のコストが安いこと』が本家VTの有利な点というのが私の認識です。

ちなみにですが、私は『円からドルへの換金』や、『分配金の再投資』、『確定申告などの手間』などが苦にならないので、手間の有無を重要視していません。むしろ多少の手間は『ほったらかし投資』の退屈を解消してくれるイベントくらいの認識です。

SBI証券など大手ネット証券であれば2020年から本家VTの買付手数料が無料になりました。このため、買付手数料について両者に優劣がありません。それから、私は余剰金は速やかに一括投資するため利用していませんが、SBI証券ならば海外ETFでも定期積立投資が可能です。

こんなところでしょうか?

本家VTと楽天VTの主な違い
項目本家VT楽天VT
買付時為替円から$への換金の手間が発生
為替手数料:0.04円/$
手数料買付手数料:無料
 ※大手ネット証券の場合
買付手数料:無料
購入単位購入単価:1口の時価(現在は9,000円程度)
→機会損失によるリターン低下が生じやすい
購入単価:100円以上1円単位
保有中運用コスト経費率:0.08%信託報酬:0.222%程度
 ※実質コストはもう少し高い
→リターンが低下が大きい
分配金と還付金年4回の分配金、年1回の還付金
→課税によるリターンが低下
 税額:米国10%、日本:20.135%
→再投資の手間が発生
→確定申告(外国税額控除)の手間が発生
→早期に正のキャッシュフロー発生
分配金なし
→日本国内課税分のリターン低下なし
売却時手数料売却手数料:最大22$売却手数料:無料
為替$から円への換金の手間が発生
為替手数料:0.04円/$

なお、為替の手数料は住信SBIネット銀行での外貨預金による換金を想定しています。

結論:本家VTの方が有利(ただし、あくまで私の場合)

始めに結論を書くと、楽天VTよりも本家VTの方が利益も大きく、投資効率も高い結果でした。ただし、私と同じ買付金額、買付タイミングで積立てた場合の話ですので、一般的に楽天VTよりも本家VTの方が有利とは断定はできません。

比較結果を整理したものが下の表です。細かい計算過程の前提は後半に記載しています。

本家VTと楽天VTの投資結果の比較
ケース買付額(円)分配金と還付金(円)最終残金(円)最終損益(円)内部収益率
海外ETF:本家VT32,001,091891,731
(内624,456再投資)
35,520,1913,519,1007.43%
投資信託:楽天VT32,001,091035,351,4573,350,3667.09%

上の表の通り、楽天VTに対して本家VTの方が、最終損益が168,734円、内部収益率が0.34%大きく、利益も投資効率もともに高くなっていました。

これは、諸々の手数料や分配金に対する課税によるリターン低下を差し引いても、経費率が低い本家VTの方がリターンが大きいということです。それだけ、保有中のコストの差がリターンを左右しているのでしょうね。今年から本家VTの買付手数料が無料になったことで、この差が更に開くかもしれません。楽天VTが本家VTを超えるためには、更に信託報酬を下げる必要がありそうです。

今後も私の投資の方針や買付のペースを以前から変更するつもりはありません。このため、現時点では私は本家VTから楽天VTに投資商品を変更しないことに決めました。本家VTでは分配金として運用期間中に正のリターンを得られる上に、最終的な利益額も楽天VTより大きいです。であれば、敢えて楽天VTに変更する理由が存在しないからです。

ちなみに結果は掲載しませんが、『SBI・全世界株式インデックス・ファンド』の場合は、最終損益3,277,717円、内部収益率6.94%でした。この結果は本家VTはおろか楽天VTにもに劣ります。信託報酬が楽天VTよりも低い0.1102%程度にも関わらずです。信託報酬だけで保有中のコストを判断するのは危険、ということなのかもしれません。

念のためもう一度書きますが、これはあくまで私の買付額、買付タイミングで本家VTではなく楽天VTを買付けた場合との比較です。ですので、一般的に楽天VTよりも本家VTの方が有利とは断定はできないことをご注意下さい。

特に投資額が月に1~2万円など少額な場合は楽天VTの方が有利になる可能性が考えられます。買付金額が少ない場合、購入単価が大きい本家VTでは投資資金全額を投資にまわせない可能性があります。端数として余った資金に対して機会損失が発生してしまいます。一方、楽天VTでは100円以上1円単位で買付が可能です。この点においては楽天VTの方が有利なのは確かです。

感覚的な意見で恐縮ですが、年間約120万円以上(月に約10万円以上)を本家VTに投資可能ならば、本家VTに投資した方がよいと感じています。もちろん投資額が十分大きい方は本家VTにすべきです。

ちなみにですが、昨年までは本家VTの買付手数料が有料で、これも機会損失を生む原因の一つになっていました。買付手数料が有料ですと、少額投資では『手数料負け』します。これを避けるため、私も約50万円程度貯めてから買付していました。資金をすぐに投資にまわせず、機会損失が発生しやすい状態だったと言えます。しかし、ついに今年からは本家VTの買付手数料が無料になり、この欠点が解消されました。非常に大変ありがたいことです。

本家VTと楽天VTの比較のための試算メモ

ここからは本家VTと楽天VTの比較のために作成した試算メモです。ケース①は私の特定口座での実績結果そのものです。ですので、最後の売却額の計算を除けば、誤りは発生しないはずです。ケース②の方は私の本家VTの買付額と分配金額を元に、楽天VTに買付できた額と購入数量を計算しています。詳細はそれぞれの節をご確認下さい。

ケース①:私の本家VTの積立結果

こちらは私の本家VT積立の実績結果です。『CF(円)』と書いた列がキャッシュフローの額になっています。他の列はあくまでご参考です。

2018年5月15日に積立てを開始し、2020年2月14日に売却した想定です。SBI証券では昨年まで買付手数料が無料ではありませんでした。このため昨年までの買付では当時の料率に応じた手数料を支払っています。また、買付時の為替レートは住信SBIネット銀行で円を$に換金した時の実レートですので、住信SBIネット銀行での為替手数料が織り込まれています。分配金と還付金は税引後の受取金額です。

私は一般NISA口座と特定口座でVTの積立を行っていますが、下の表は特定口座の結果です。毎年一般NISA口座の枠を使い切ってから特定口座の投資をしているため、一年間の前半の積立が少なくなっています。また、2018年の前半の高額な積立は個別株や投資信託を売却した資金でVTを買付けたタイミングのものです。

売却時の金額は、評価額から利益(評価額と買付額の差)に対する日本国内の課税分と、売却手数料を減じた上で、更に為替手数料を減じています。

なお、一般NISA口座については計算をしていません。一般NISA口座では分配金に対する日本国内税が非課税になるため、特定口座よりも更にリターンが高くなります。このため特定口座で本家VTの方が優れているなら、敢えて一般NISA口座についても計算する意味がないと考えたからです。

  • 買付額: 32,001,091円
  • 買付額(再投資分含む): 32,625,547円
  • 分配金と還付金 : 891,731円
  • 再投資額: 624,456円
  • 非再投資額: 267,275円
  • 売却額: 35,252,916円
  • 最終残金: 35,520,191円
  • 最終損益: 3,519,100円
  • 内部収益率: 7.46%
本家VT積立投資のキャッシュフロー(2020年2月14日時点まで)
日付摘要決済CF
(円)
CF
($)
為替
(円/$)
本家VT約定価格
($/株)
手数料
(円)
数量
(口)
累計数量
(口)
2018/5/15買付円貨決済-503,78275.952,3766060
2018/6/19買付外貨決済-4,991,624-45,099.60110.6875.132,391600660
2018/6/28分配金外貨決済28,786261.57110.05660
2018/7/3買付外貨決済-6,126,210-55,250.80110.8872.672,3957601,420
2018/7/11買付外貨決済-2,878,536-25,851.24111.3574.872,4053451,765
2018/7/26買付外貨決済-1,525,993-13,735.30111.1075.352,4001821,947
2018/8/3買付外貨決済-10,991,809-98,466.44111.6375.152,4111,3103,257
2018/10/2分配金外貨決済96,487846.45113.993,257
2018/10/16買付外貨決済-498,350-4,453.92111.8971.492,410623,319
2018/11/29買付外貨決済-496,992-4,360.34113.9869.992,403623,381
2018/12/7買付外貨決済-874,056-7,766.62112.5468.542,4311133,494
2019/1/4分配金外貨決済131,1901,218.56107.663,494
2019/2/18還付円貨決済14,3773,494
2019/3/29分配金外貨決済78,446706.78110.993,494
2019/6/21分配金外貨決済148,4481,382.20107.403,494
2019/6/25買付外貨決済-632,108-5,885.53107.4075.182,320783,572
2019/7/10買付外貨決済-1,022,256-9,392.28108.8475.572,3511243,696
2019/8/5買付外貨決済-237,630-2,227.71106.6773.901,149303,726
2019/9/4買付外貨決済-232,740-2,198.77105.8572.941,125303,756
2019/9/30分配金外貨決済126,7221,174.22107.923,756
2019/10/7買付外貨決済-261,786-2,442.48107.1873.651,289333,789
2019/10/30買付外貨決済-244,602-2,244.26108.9977.011,204293,818
2019/11/28買付外貨決済-312,850-2,864.40109.2279.181,540363,854
2019/12/10買付外貨決済-794,223-7,315.30108.5779.282,389923,946
2019/12/30分配金外貨決済189,7971,732.363,946
2020/2/10還付円貨決済77,4783,946
2020/2/14売却-35,252,916109.7482.932,4163,946

ケース②:楽天VTに積立てていた場合の結果

これがもしも楽天VTに積立ていたらどうなっていたかを計算した結果です。『CF(円)』と書いた列がキャッシュフローの額になっています。

2018年5月15日に積立てを開始し、2020年2月13日に売却した想定です。厳密には、本家VTの価格と楽天VTの基準価額に一営業日分のズレがあるため、それも考慮すべきかもしれません。しかし、今回はあくまで本家VTと同一の日に買付をした場合を想定しています。

買付のタイミングは本家VTと全く同一ですが分配金や還付金は発生しません。また、本家VTでは分配金や還付金が発生した場合、次の買付のタイミングで再投資をしています。楽天VTでは再投資ができないため、分配金発生直後の買付額から再投資に相当する額を減じています。

売却時の金額は、評価額から利益(評価額と買付額の差)に対する日本国内の課税分を減じています。

楽天VTの過去の基準価額は『楽天・全世界株式インデックス・ファンド | 投資信託・ETFのご案内 | 投資信託・ETFなら楽天投信投資顧問』のページでCSVファイルとしてダウンロード可能でした。

  • 買付額: 32,001,091円
  • 最終残金: 35,351,457円
  • 最終損益: 3,350,366円
  • 内部収益率: 7.09%
楽天VT積立投資のキャッシュフロー(2020年2月14日時点まで)
日付CF
(円)
楽天VT基準価額
(円/万口)
数量
(口)
累計数量
(口)
評価額
(円)
2018/5/15-503,78210,404484,220484,220503,782
2018/6/19-4,991,62410,3774,810,2775,294,4975,494,100
2018/7/3-6,097,42410,2165,968,50411,263,00111,506,282
2018/7/11-2,878,53610,4712,749,05514,012,05614,672,024
2018/7/26-1,525,99310,5971,440,02415,452,08016,374,569
2018/8/3-10,991,80910,59010,379,42325,831,50327,355,562
2018/10/16-401,86310,075398,87126,230,37426,427,102
2018/11/29-496,99210,218486,38926,716,76327,299,188
2018/12/7-874,0569,920881,10527,597,86827,377,085
2019/6/25-259,64710,340251,10927,848,97728,795,842
2019/7/10-1,022,25610,580966,21628,815,19330,486,474
2019/8/5-237,63010,082235,69729,050,89029,289,107
2019/9/4-232,7409,948233,95729,284,84729,132,566
2019/10/7-135,06410,206132,33829,417,18530,023,179
2019/10/30-244,60210,795226,58829,643,77332,000,453
2019/11/28-312,85011,193279,50529,923,27833,493,125
2019/12/10-794,22311,067717,65030,640,92833,910,315
2020/2/1435,351,45711,81330,640,92836,196,128

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